クワオアー

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クワオアー 🝾
50000 Quaoar
ハッブル宇宙望遠鏡による撮影。
ハッブル宇宙望遠鏡による撮影。
仮符号・別名 2002 LM60
分類 太陽系外縁天体
軌道の種類 エッジワース・
カイパーベルト
キュビワノ族
発見
発見日 2002年6月4日
発見者 C. A. トルヒージョ
M. E. ブラウン
軌道要素と性質
元期:2019年4月27日 (JD 2458600.5)[1]
軌道長半径 (a) 43.6907122 au[1]
近日点距離 (q) 41.9624948 au[1]
遠日点距離 (Q) 45.419 au[1]
離心率 (e) 0.0395557[1]
公転周期 (P) 288.78 [2]
平均軌道速度 4.52 km/s
軌道傾斜角 (i) 7.98813 度[1]
近日点引数 (ω) 146.43067 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 188.83699 度[1]
平均近点角 (M) 300.68579 度[1]
前回近日点通過 1787年頃
次回近日点通過 2066年11月25日[1]
衛星の数 1
物理的性質
直径 890 ± 70 km[3]
1,110 ± 5 km(掩蔽観測より)[4]
1,074 ± 38 km[5]
質量 (1.6 ± 0.3)×1021 kg[3]
平均密度 4.2 ± 1.3 g/cm3[3]
表面重力 0.276 - 0.376 m/s3
脱出速度 0.523 - 0.712 km/s
自転周期 (8.840 ± 0.008)[2]
or 17.6788 時間
絶対等級 (H) 2.4[1]
アルベド(反射能) 0.069 - 0.128
or 0.077 - 0.140
表面温度 ~43 K
色指数 (B-R) 1.58 ± 0.01
色指数 (B-V) 0.94 ± 0.01
色指数 (V-R) 0.64 ± 0.01
色指数 (V-I) 1.28 ± 0.02
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クワオアー[6]またはクワーオワー[7][8] (50000 Quaoar) は、将来的に準惑星冥王星型天体)に分類される可能性がある太陽系外縁天体の一つ。エッジワース・カイパーベルトに位置し、太陽からおよそ60億キロメートル(43.7au)のほぼ真円に近い軌道を、約290年の周期で公転している。

概要

2002年6月4日カリフォルニア工科大学の天文学者チャドウィック・トルヒージョとマイケル・ブラウンによって、カリフォルニア州パサデナのパロマー天文台にあるサミュエル・オシン望遠鏡で撮影された画像から発見された。この発見は2002年10月7日アメリカ天文学会年会で発表された。その後の調査で、最も古い画像としてはパロマー天文台で1954年5月25日に撮影された写真乾板にこの天体が写っていたことが判明した。

クワオアーは発見当時直径約1,200kmと推定され、冥王星以降に発見された最大の天体であり、またそれまでに知られていた小惑星の中で最大のものだった。後にセドナやエリスにその座を明け渡した。ただしその後セドナの直径は下方修正されており、クワオアーより小さい可能性がある。

2019年6月、東京大学木曽観測所の口径105cmシュミット望遠鏡に搭載された超広視野高速カメラ「トモエゴゼン」を用いた掩蔽の高感度動画観測によって、クワオアーに大気がほとんど存在しないことが判明した[7][9][10]

名称

この天体の名称は、「海王星よりも十分遠く、太陽系の寿命と同程度に十分長い間安定な軌道を持つ天体には創世神話に関連した名前を付ける」という国際天文学連合の規則[11]に従い、ロサンゼルス周辺のアメリカ先住民であるトングヴァ族に伝わる神話の、歌と踊りで神々と生物を作った創世神クワオワーに因んで名付けられた。

組成

クワオアーの平均密度は 4.2 ± 1.3 g/cm3で、太陽系外縁天体としては有意に高密度な天体と考えられている。これはクワオアーは岩石と氷の混合物からなる一般的な外縁天体と異なり氷をほとんど含んでいないことを示している[3][12]アルベドは0.1程度とかなり低いと推定されているが、これは表面から氷が失われている事を意味する。ニュー・ホライズンズ計画によって2015年に探査機が冥王星を訪れ、続けていくつかの外縁天体の探査が行なわれた後には、これらの事実に関してはるかに多くの知識を得られるはずである。

2004年にクワオアーの表面に水の結晶の存在が確認され、研究者を驚かせた。これは最近1000万年以内に表面温度が-160℃ (110K) 以上に上昇したことを示している。どのような原因で-220℃ (55K) というクワオアーの元々の温度が上昇したのかについていくつかの推測が行なわれている。小天体の衝突によって温度が上がったという説を唱える研究者もいるが、最も議論された説ではクワオアーの中心核に含まれる放射性元素崩壊熱によって氷火山現象が起きているのではないかと推定している[13]

分類の経緯

クワオアーの発見によって、冥王星を惑星に分類する根拠はやや弱くなった。当時、既に天文学者たちはクワオアー程度の大きさを持つ外縁天体が10個ほどは存在するかもしれないと考えていたため、冥王星に加えてクワオアーやそれらの天体を惑星に含めるように惑星の定義を変更する必要が出てくる可能性が生じたのである。

クワオアーはある意味では冥王星よりも惑星らしいと言える。クワオアーの公転軌道は半径40auをやや超える円に近いもので、冥王星のような離心率の大きな楕円軌道ではない。また、海王星と同様にクワオアーの軌道も冥王星の近日点と遠日点の間にある。よってある時期には冥王星はクワオアーよりも太陽に近く、ある時期にはクワオアーよりも遠くなる。

クワオアーに続きさらに大きな(90377) セドナが発見され、冥王星よりも直径の大きな (136199) エリスが発見されるに及んで惑星定義の見直しを迫られる事となった。結局、2006年8月24日国際天文学連合総会で惑星の定義が採択された結果、冥王星など3つの天体が準惑星 (dwarf planet) に分類されることになった。更に、今後の観測によって準惑星と認められるかもしれない天体としてクワオワーなど10数個がリストアップされた。

衛星

クワオアーとウェイウォットと環

ハッブル宇宙望遠鏡で2006年2月14日に撮影された画像から、マイケル・ブラウンとT.-A. Suerの分析により衛星が発見されたことが、2007年2月22日付の国際天文学連合回報 (IAUC) 8812号で報告された。この衛星にはS/2006 (50000) 1という仮符号が付けられた後、2009年にウェイウォット ((50000) Quaoar I Weywot) と名付けられた。この名はトングヴァ族の神話でクワオアーによって創られた神の一柱に由来する。

詳細は「クワオアーの環」を参照
クワオアーの周りに存在する環と衛星ウェイウォットの想像図

2023年2月、クワオアーの周囲に環が存在することが確認されたという研究結果が科学雑誌ネイチャーにて公表された。惑星以外の天体で、環を持つことが明確に確認されたのは(10199) カリクローと(136108) ハウメアに次いで3例目である(彗星・小惑星遷移天体として知られるキロンも環を持つ可能性が指摘されている[14])。この環は2018年から2021年にかけて発生したクワオアーによる掩蔽観測から発見された。環はクワオアーから 4,148.4 ± 7.4 km 離れたところに存在しているとみられているが、これは惑星も含めた他の天体の環とは異なり、母天体のロッシュ限界から2倍以上も離れた距離に存在しているという特徴がある[15]

画像

  • クワオアーの写真、その推定直径。
    クワオアーの写真、その推定直径。
  • クワオアー(黄色)、海王星(青)、冥王星(ピンク)とその他のキュビワノ族の軌道の比較
    クワオアー(黄色)、海王星(青)、冥王星(ピンク)とその他のキュビワノ族の軌道の比較
  • クワオアー(青)、冥王星(赤)の軌道の比較
    クワオアー(青)、冥王星(赤)の軌道の比較
  • クワオアー(青)、冥王星(赤)の軌道の比較
    クワオアー(青)、冥王星(赤)の軌道の比較

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k クワオアー - 小惑星センター
  2. ^ a b “50000 Quaoar (2002 LM60)”. NASA/JPL. 2019年12月5日閲覧。
  3. ^ a b c d Fraser, Wesley C.; Brown, Michael E. (2010). “Quaoar: A Rock in the Kuiper Belt”. The Astrophysical Journal 714 (2): 1547-1550. arXiv:1003.5911. Bibcode: 2010ApJ...714.1547F. doi:10.1088/0004-637X/714/2/1547. ISSN 0004-637X. 
  4. ^ Braga-Ribas, F. et al. (2013). “The Size, Shape, Albedo, Density, and Atmospheric Limit of Transneptunian Object (50000) Quaoar from Multi-chord Stellar Occultations”. The Astrophysical Journal 773 (1): 26. Bibcode: 2013ApJ...773...26B. doi:10.1088/0004-637X/773/1/26. ISSN 0004-637X. 
  5. ^ Fornasier, S. et al. (2013). “TNOs are Cool: A survey of the trans-Neptunian region”. Astronomy & Astrophysics 555: A15. arXiv:1305.0449. Bibcode: 2013A&A...555A..15F. doi:10.1051/0004-6361/201321329. ISSN 0004-6361. 
  6. ^ 天文学大事典編集委員会 編『天文学大事典』(初版第1版)地人書館、318頁。ISBN 978-4-8052-0787-1。 
  7. ^ a b “準惑星候補クワーオワーによる恒星食の動画観測に成功”. AstroArts (2019年12月3日). 2019年12月5日閲覧。
  8. ^ “全世界の観測成果 ver.2” (Excel). 薩摩川内市せんだい宇宙館 (2018年3月3日). 2019年3月11日閲覧。
  9. ^ “東京大学木曽観測所トモエゴゼンを用いて太陽系外縁天体クワオアーによる恒星掩蔽(えんぺい)現象の高感度動画観測に成功”. 東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所 (2019年11月27日). 2019年12月3日閲覧。
  10. ^ Arimatsu, Ko et al. (2019). “New Constraint on the Atmosphere of (50000) Quaoar from a Stellar Occultation”. The Astrophysical Journal 158 (6): 236. arXiv:1910.09988. doi:10.3847/1538-3881/ab5058. ISSN 1538-3881. 
  11. ^ “Minor Planet Name Guide”. IAU (2000年7月8日). 2010年4月7日閲覧。
  12. ^ David Shiga (2010年4月7日). “Is densest Kuiper belt object a wayward asteroid?”. New Scientist. http://www.newscientist.com/article/dn18739-is-densest-kuiper-belt-object-a-wayward-asteroid.html?DCMP=OTC-rss&nsref=space 2010年4月7日閲覧。 
  13. ^ Jewitt, David C.; Luu, Jane (2004). “Crystalline water ice on the Kuiper belt object (50000) Quaoar”. Nature 432 (7018): 731-733. doi:10.1038/nature03111. ISSN 0028-0836. 
  14. ^ “James Webb Space Telescope spies rings around centaur Chariklo”. アストロノミー. (2023年2月9日). https://astronomy.com/news/2023/02/jwst-spies-chariklo-rings 2023年2月20日閲覧。 
  15. ^ Morgado, B. E.; Sicardy, B.; Braga-Ribas, F. et al. (2023). “A dense ring of the trans-Neptunian object Quaoar outside its Roche limit”. Nature 614: 239–243. doi:10.1038/s41586-022-05629-6. 

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、クワオアーに関連するメディアがあります。

外部リンク

  • クワオアー - JPL Small-Body Database ウィキデータを編集
    • 接近アプローチ · 発見 · 天体暦 · 軌道図 · 軌道要素 · 物理パラメータ
  • クワオアー - 小惑星センター
  • クワオアーの衛星
  • 発見者トルヒージョのページ
  • Astronomers Contemplate Icy Volcanoes in Far Places - ニューヨーク・タイムズ
  • Quaoar, the newest planet . . . or is it? - article in an Australian science magazine
  • New Planet-Shaped Body Found in Our Solar System - article in National Geographic
  • Volcanism possible on planet-like Quaoar - CNN.com
  • Chilly Quaoar had a warmer past - Nature.com article
冥王星型天体とその候補
カイパーベルト天体
  • 冥王星
  • イクシオン
  • オルクス
  • 2003 AZ84
  • 2005 RN43
  • 2002 MS4
  • 2004 GV9
  • 2002 UX25
  • 2003 OP32
  • ハウメア
  • クワオアー
  • ヴァルナ
  • 2002 TX300
  • 2005 UQ513
  • 2005 RR43
  • 2003 MW12
  • マケマケ
  • 2002 AW197
  • 2007 JJ43
散乱円盤天体
  • 2004 XA192
  • 2002 TC302
  • 2007 OR10
  • エリス
  • 2010 EK139
  • 2007 UK126
  • 2005 QU182
その他
  • 2010 KZ39
  • セドナ
小惑星帯
IAU
  • ケレス
候補
  • ヒギエア
  • インテラムニア

ケンタウルス族
候補
  • カリクロー
  • キロン
  • 2010 TY53
冥王星族
IAU
候補
  • フヤ
  • イクシオン
  • オルクス
  • 2001 QF298
  • 2002 VR128
  • 2002 XV93
  • 2003 AZ84
  • 2003 UZ413
  • 2003 VS2
  • 2007 JH43
  • 2017 OF69
トゥーティノ族
候補
  • 2002 WC19
キュビワノ族
IAU
  • マケマケ
候補
  • カオス
  • クワオアー
  • サラキア
  • ヴァルダ
  • ヴァルナ
  • 1998 SN165
  • 2002 AW197
  • 2002 CY248
  • 2002 KX14
  • 2002 MS4
  • 2002 UX25
  • 2003 QW90
  • 2004 GV9
  • 2004 NT33
  • 2004 PF115
  • 2004 TY364
  • 2004 UX10
  • 2005 RN43
  • 2005 UQ513
  • 2007 JJ43
  • 2010 FX86
散乱円盤天体
IAU
  • エリス
候補
  • Gǃkúnǁʼhòmdímà
  • Dziewanna
  • 1996 GQ21
  • 1996 TL66
  • 2001 UR163
  • 2002 TC302
  • 2004 XA192
  • 2005 QU182
  • 2005 RM43
  • 2006 QH181
  • 2008 OG19
  • 2010 KZ39
  • 2010 RE64
  • 2010 RF43
  • 2010 TJ
  • 2010 VZ98
  • 2013 FY27
  • 2014 AN55
  • 2014 WK509
  • 2018 AG37
  • 2018 VG18
  • 2021 DR15
  • 2021 LL37
分離天体
候補
  • 2003 FY128
  • 2003 QX113
  • 2004 XR190
  • 2005 TB190
  • 2008 ST291
セドノイド
候補
  • セドナ
  • 2012 VP113
その他 /
未知の共鳴
IAU
  • ハウメア
候補
  • Gonggong
  • 1999 CD158
  • 1999 DE9
  • 2000 YW134
  • 2002 XW93
  • 2010 JO179
  • 2010 VK201
  • 2011 FW62
  • 2011 GM27
  • 2013 FZ27
  • 2014 UM33
  • 2015 AM281
  • 2015 RR245