アレントンカバ

アレントンカバ
河馬の骨格を収めた、博物館の展示ケース
ダービー博物館・美術館で展示されているアレントンカバの骨格
材質
寸法体長: 3 メートル
発見1895年、アレントン(英語版)
所蔵ダービー博物館・美術館 博物学展示室

アレントンカバ: Allenton Hippo)は1895年イングランド・ダービーのアレントン(英語版)で発見された[1]、実在のカバHippopotamus amphibius)。その全長 3 メートルにわたる骨格は、ダービー博物館・美術館で展示されている。骨が発見された場所の近くには、現在それを記念する彫刻が置かれている[2]

経緯

骨が発見されたアレントンは、ダービーから 5 キロメートル離れた郊外の村だった。1895年3月に村のクラウン・インで新しく井戸を掘っている際、作業員がまず悪臭に気付き、次いで大きな見慣れない骨を見つけて工事が止まった。何人かの村の有力者が追加調査のために資金を出し合い、この発見は村全体が分かち合うものだということで合意した。穴は 4.5 平方メートルの大きさまで広げられたが、地表から下 1.8 メートルの所まで水が湧き出てきて、それ以上調べられなくなった。さらに下まで掘り下げられるよう、ポンプが何台も用意され、男たちが雇われてそれらを動かした。H.H. ベンローズと R.M. ディーリはこれら一連の作業を見物し、後にその様子を本にしている[3]。この調査費用に出資した人々は、これらの骨を16年前に開館したダービー博物館へ寄贈することで合意した[4]

アレントンカバの下顎の骨と、スマートフォンにこの記事を表示させるQRコード

最終的に 127 個の骨が見つかり、その殆どは河馬のものであり、二・三個がのものだった。アーノルド・ベンローズは、これらの骨はイングランドと欧州大陸が地続きだったことの証拠だと考えている。なぜなら、そう仮定することによって、この種の骨がイングランド、欧州大陸、北海の海底から見つかっていることを最もよく説明できるからだ[1]

ボールトン(英語版)から発見された、アレントンカバや他の動物の化石は全て、アレントン台地と呼ばれる地形から発見された。これは現在のダーウェント川(英語版)の水位から上、6 メートルにのぼる河川由来の砂礫層である。この地層は約12万年前のエーミアン間氷期(英語版)にあたる。ここに河馬がいたということは、当時は今日より気候が温暖だったことを示している。冬季に氷点下が続くことはなく、夏の平均気温は 18 度以上だったと思われる[5]

その後の発見

ラフバラー大学でレーザースキャンされるアレントンカバの犬歯。

1973年7月、ボールトン(英語版)近辺での掘削工事中、また別の骨片が見つかった。ダービー博物館にはその一部も展示されている。その下水道工事中、鹿、雄牛の骨、さらには河馬、犀、象の骨も見つかった。それらは一・二個の骨でしかなかったが、なかにはイギリスで見つかった内では最大となる河馬の歯もあった[6]

アレントン・ショッピングセンターの彫刻

2006年、マイケル・ダン・アーチャーはアレントン(英語版)の町の彫刻制作を引き受けた。アレントンでの議論の結果、町の人たちは地域の歴史を反映した何らかのしるしを欲しがっている事が分かった。アーチャーの彫刻は、まず円環を 3 つに切り分けた、腰掛けとして充分なサイズの黒い花崗岩からなる。そして磨かれた花崗岩の表面の上には、鋳鉄でできた河馬の骨の複製が設置されている。粘土型から鋳造された下顎に加えて、その他の骨もダービー博物館からいくつかが選び出されラフバラー大学に持ち込まれ、コンピュータで立体モデルを作るべくレーザースキャンされた。このモデルによって、骨の精密な複製が可能になり、アーチャーはその中から鋳造すべきモデルを選び出した[2]

脚注

ウィキメディア・コモンズには、アレントンカバに関連するカテゴリがあります。
  1. ^ a b Arnold Bemrose, H.H. (1910), Derbyshire, Cambridge University Press, p. 53, https://archive.org/stream/derbyshire00arnouoft/derbyshire00arnouoft_djvu.txt 2011年7月31日閲覧, "1896年に筆者とMr R.M. ディーリはダービーのすぐ南にあるアレントンのダーウェント砂礫層からさらに多数の河馬の骨と、象の胸骨、犀の大腿骨の一部を手に入れた。これらの骨は現在ダービー博物館にある。" 
  2. ^ a b Archer, Michael Dan. “Derby Sculpture”. Michael Dan Archer. 2011年7月31日閲覧。
  3. ^ Arnold Bemrose, H.H.; R.M.Deeley (1896-8), “Discovery of Mammalian Remains in the Old River-gravels of the Derwent near Derby”, J. of the Geological Society 
  4. ^ “Treasures of Derby” (英語). Derby City Council. 2010年7月31日閲覧。
  5. ^ van Kolfschoten, Th. (2000), “The Eemian mammal fauna of central Europe”, Netherlands Journal of Geosciences 79 (2/3): 269-281, http://www.njgonline.nl/publish/articles/000099/article.pdf 2011年7月31日閲覧, "…エーミアン間氷期の動物相で見られる河馬や水牛は、相対的に夏の気温が高かったこと(7月の平均気温が 18 度以上)、また厳しく長い氷点下の時期が冬に無かったことを示している。" 
  6. ^ Grange, William (2003), When Hippos ... Swam in the Derwent, Derby Museum and Art Gallery 
画家

フランシス・レガット・チャントリー - アーネスト・エリス・クラーク(英語版) - ウィリアム・ジョン・コフィ(英語版) - ダービー・スケッチング・クラブ(英語版) - ハロルド・グレズリー(英語版) - カウント・ホルツェンドルフ(英語版) - アルフレッド・ジョン・キーン(英語版) - ヘンリー・ラーク・プラット(英語版) - デイヴィット・ペイン(英語版) - ロナルド・ポープ(英語版) - サミュエル・レイナー(英語版) - ルイーズ・レイナー - トーマス・スミス(英語版) - アーネスト・タウンゼンド - ジョージ・ターナー - ジョセフ・ライト

地質学

アッシュフォード黒大理石 - ジョン・ファレイ(英語版) - ウィリアム・マーチン(英語版) - マトロカイト(英語版) - ジョン・モウ - ホワイト・ワトソン(英語版) - ジョン・ホワイトハースト

装飾芸術

いとしのチャールズ王子の部屋(英語版)

軍事史

第9/12ロイヤル・ランサーズ(英語版) - ウィリアム・ゴート(英語版) - ロバート・ケルズ(英語版) - フランシス・オクタヴィアス・グレンフェル - デイヴィット・スペンス(英語版) - 『負傷したフランス軍将校を北米インディアンのトマホークから救うジョンソン将軍

博物学

アレントンカバ - キング・オブ・ローマ - ウィリアム・リチャードソン・リントン(英語版) - ウィリアム・ハント・ペインター - ジョセフ・ホイッティカー

絵画
ジョセフ・ライト

リチャード・アークライト』 - 『太陽系儀の講義』 - 『インディアンの寡婦』 - 『ロミオとジュリエット』 - 『ミラヴァン(英語版)』 - 『賢者の石を探す錬金術師』 - 『ウェルギリウスの墓』 - 『鍛冶屋の仕事場』 - 『アースストッパー(英語版)』 - 『蝋燭の光に照らされた哲学者(英語版)』 - 『サミュエル・ワード(英語版)』 - 『虜囚(英語版)』 - 『囚われの王(英語版)』 - 『トーマスおよびアン・ボロー(英語版)

磁器
古代ブリテン

クレスウェリアン文化(英語版) - デルベンティオ(英語版) - ストラッツ・パークのローマ砦 - ダービー・レースコースのローマ定住地 - ハンソンの丸木舟(英語版) - 大異教軍 - ヒース・ウッドの丘の埋葬地(英語版) - コッドナー城(英語版) - ダフィールド城 - イックニールド・ストリート(英語版) - ザ・ストリート(英語版) - ザ・ロング・レイン(英語版)

科学・工学
関連項目
組織

アンドリュー・ハンディサイド - イギリス鉄道研究局(英語版) - ダービー哲学会 - ダービー展覧会

人物

アルクムンド・オブ・ダービー(英語版) - ピーター・ペレス・バーデット(英語版) - ドゥーズ・コーク(英語版) - ダニエル・コーク(英語版) - ウィリアム・キャヴェンディッシュ(英語版) - ジェイムズ・ファーガソン(英語版) - リチャード・クニル・フリーマン(英語版) - アルフレッド・グディ - ジョージ・ハーパー・クルー(英語版) - リュウェリン・ジューイット(英語版) - ジョン・ロウム(英語版) - ウィリアム・マンディ(英語版) - ジョセフ・ピックフォード - ワシントン・シャーリー - ジョージ・ソロコールド(英語版) - ジョセフ・ストラット(英語版)

ダービー産業博物館ロウムズ・ミル - ピックフォードハウス博物館 - ダービー中央図書館